リーマン・ショック(2008年 世界金融危機)

2008年に破産する前のリーマン・ブラザーズのマンハッタン本社

2008年9月、米大手投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻をきっかけに、世界の金融市場は大混乱に陥りました。信用不安と流動性低下が連鎖し、株式市場・短期金融市場・実体経済へ危機が一気に波及しました。

  • 発生日:2008年9月15日
  • Event Type:金融危機 / 投資銀行破綻 / 信用収縮
  • 関連テーマ:サブプライムローン / MBS / CDO / 流動性危機 / 世界同時株安

重要度(Importance Rating)

★★★★★(重要度 5)

概要(Overview)

リーマン・ショックは、2008年に発生した世界金融危機の中心的な出来事です。アメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズが、住宅ローン関連の不良債権を抱え、2008年9月15日に連邦倒産法第11章を申請して破綻しました。

この破綻は、金融市場における信用不安と流動性の急激な低下を引き起こしました。金融機関は互いの信用力を疑い、銀行間取引や短期資金市場で資金の流れが滞りました。その結果、市場の流動性は急速に低下し、世界中の株式市場が大きく下落しました。

危機は金融市場だけでなく、企業倒産、雇用悪化、消費減速など実体経済にも波及しました。各国政府は公的資金の注入や金融機関の救済を実施し、中央銀行は大規模な流動性供給と利下げを行いました。

本イベントの本質は、「住宅バブル → 証券化商品 → 金融機関損失 → 信用収縮 → 世界同時不況」というリスク伝播にあります。金融機関の過剰なレバレッジとリスク管理の不備が、世界経済全体を巻き込む危機へ発展した事例です。

2008 年 9 月 15 日、ニューヨーク市のリーマン ブラザーズ本社

チャート(Nikkei225 Chart)

重要なポイント(Key Takeaways)

  • 住宅バブルの崩壊は、証券化商品を通じて金融システム全体へ波及しました
  • 信用不安が高まると、金融機関同士の資金取引が停止し流動性危機が発生します
  • レバレッジの高い金融機関は、資産価格下落に対して極めて脆弱です
  • カウンターパーティーリスクは、危機時に市場全体の疑心暗鬼を拡大させます
  • 政府・中央銀行の迅速な流動性供給と公的資金投入が、システム崩壊回避の鍵となります

詳細(Detail)

背景(Background)

リーマン・ショックの背景には、ITバブル崩壊後に積み上げられた過剰な金融緩和と、それによって形成された住宅バブルがありました。

特に、返済能力の低い借り手向けの住宅ローンであるサブプライムローンが拡大し、それを証券化した不動産担保証券(MBS)や債務担保証券(CDO)などの金融商品が大量に組成されました。

これらの商品には信用格付け機関によって高い格付けが与えられ、多くの金融機関が高利回りを求めて保有するようになりました。しかし、実際には住宅価格上昇を前提とした商品であり、住宅価格が下落すると損失が急速に拡大する構造でした。

その後、米国住宅価格が下落に転じると、サブプライムローン関連商品の価値は大きく毀損し、これを大量に保有していた金融機関の財務が悪化しました。市場は「どの金融機関がどれだけ損失を抱えているのか」が分からない状態となり、信用不安が拡大していきました。

イギリスバーミンガムのノーザン・ロック銀行の支店前で、サブプライム危機により預金を引き出すため並ぶ人々(2007年9月15日)

推移(Event Progression)

金融危機の最初の大きな兆候は、2007年8月9日のパリバ・ショックでした。フランスの大手金融機関BNPパリバ傘下のミューチュアルファンドが、保有する住宅ローン証券の損失拡大と流動性低下を理由に、投資ファンドの解約凍結を発表しました。

これにより、サブプライムローン関連の証券化商品には買い手がつかなくなり、世界の金融市場は一時的なパニックに陥りました。その後、2008年3月には米第5位の証券会社ベアー・スターンズが経営危機に陥り、JPモルガン・チェースによる救済買収が行われました。

しかし、ベアー・スターンズ救済後も資産価格の下落には歯止めがかからず、証券会社の財務は大きく毀損しました。中でも米第4位の投資銀行リーマン・ブラザーズは厳しい状況に追い込まれました。

FRBや米財務省を交えた協議では、他の金融機関への身売りや出資受け入れが模索されましたが、不調に終わりました。最終的にリーマン・ブラザーズは自力再建を断念し、2008年9月15日に連邦倒産法第11章の適用を申請しました。

リーマン破綻は金融市場に「カウンターパーティーリスク」という新たな恐怖を植え付けました。金融機関は取引相手の債務不履行リスクを恐れ、短期金融市場で貸し渋りを強めました。頼みの綱は中央銀行の資金供給のみとなりました。

リーマン破綻翌日の9月16日には、FRBが米保険最大手AIGに最大850億ドルのつなぎ融資を実施することを決定しました。AIGはCDSを通じて住宅ローン証券化商品の元利払いを大規模に保証しており、同社が破綻すれば金融機関の連鎖破綻が避けられないと判断されたためです。

その後、米政府は金融安定化法案を発表しましたが、9月29日に米下院が緊急経済安定化法案を否決したことで市場は再び急落しました。10月に入り法案は可決されましたが、金融市場の混乱は10月いっぱい続くことになりました。

BNP パリバのデザイン



マディソンアベニュー 383 にあるベア・スターンズの旧オフィス



AIG NY 本社(2014年1月7日)

影響(affect)

リーマン・ショックを中心とした世界的な金融危機は、簡単に落ち着くものではありませんでした。主要国中央銀行による資金供給や、政府による公的資金投入によって、時間とともに金融市場は徐々に安定へ向かいました。

しかし、資産価格の大幅下落により金融機関のバランスシートは大きく毀損し、経済活動も急速に悪化しました。企業は資金調達が困難となり、投資や雇用を削減しました。その結果、世界的な景気後退が発生しました。

また、政府による金融機関救済や景気対策は、各国の財政負担を大きく増加させました。この財政悪化は、その後の欧州債務危機へとつながっていきます。

投資家心理は「リスク選好」から「信用不安」、そして「全面的なリスク回避」へ急速に変化しました。危機の本質は、単なる株価下落ではなく、信用市場と短期金融市場の機能停止にありました。

本イベントは、「証券化商品損失 → 金融機関不信 → 流動性枯渇 → 株価暴落 → 実体経済悪化」という、現代金融危機の典型的なリスク伝播を示しました。

2011年3月29日にアテネで行われた、緊縮財政の反対デモ

市場への影響(Market Impact)

  • 日経平均:2007年高値18,261円台から2008年10月に7,000円台まで下落しました
  • NYダウ:2008年9月29日に777ドル安となり、当時の過去最大下落幅を記録しました
  • 金融株:投資銀行・保険・銀行株を中心に急落しました
  • 短期金融市場:金融機関同士の資金取引が急速に萎縮しました
  • 政策対応:各国中央銀行の協調利下げ、流動性供給、公的資金投入が実施されました

経緯(Timeline)

日付 内容
2007年7月9日 日経平均1万8261.98円(ITバブル後最高値)
2007年8月9日 仏BNPパリバ傘下のミューチュアルファンドが資産凍結(パリバ・ショック)
2007年9月14日 英中央銀行、ノーザン・ロックへ救済融資発表
2007年10月9日 NYダウ平均株価が史上最高値1万4164.53ドル。
2008年3月16日 JPモルガン・チェースが、経営危機に陥っていたベアー・スターンズの買収を発表
2008年5月30日 JPモルガン・チェースがベアー・スターンズを救済合併
2008年9月7日 政府支援機関(GSE)のフレディマックとファニーメイがアメリカ政府の管理下になる
2008年9月10日 リーマン・ブラザーズの株価が、韓国産業銀行との出資交渉が決裂したことを契機に同月9日45%まで下落する
2008年9月15日 リーマン・ブラザーズが連邦倒産法第11章適用を申請し経営破綻。負債総額6130億ドル(約65兆円)(リーマン・ショック)
2008年9月15日 バンク・オブ・アメリカがメリルリンチを救済合併
2008年9月16日 アメリカ政府とFRBが全米最大の保険会社AIGに850億ドルの融資を決定。アメリカ政府がAIGの株式の79.9%を取得し事実上の国有化
2008年9月20日 米政府、公的資金による金融安 定化法案を発表
2008年9月22日 三菱UFJフィナンシャル・グループがモルガン・スタンレーへ出資することを発表
2008年9月25日 ワシントン・ミューチュアルが破綻。JPモルガン・チェースが事業買収
2008年9月29日 アメリカ合衆国下院が緊急経済安定化法案を否決。「世界恐慌の再来」を世界が危惧する事態になる。
2008年9月29日 法案否決を受けてNYダウが史上最大の777ドル安となる。日経平均も暴落
2008年10月1日 緊急経済安定化法がアメリカ合衆国上院で可決(下院で否決された案とは多少異なる。下院での採決に向けた援護射撃であり、バラク・オバマ、ジョン・マケイン両大統領候補(上院議員)も賛成した)
2008年10月3日 緊急経済安定化法がアメリカ合衆国下院でも可決し成立。アメリカ政府は7000億ドルの公的資金を投入して不良資産を買い取ることを決定
2008年10月7日 6日のNYSEでダウが1万ドル割れ(終値9955.50ドル)。円ドル相場一時100円台(中央値102円)。原油一時90ドル割れ。
2008年10月7日 7日の日経平均が4日連続続落、合計1200円。一時1万円割れ。(終値1万0155.90円)
2008年10月7日 英大手銀行ロイヤルバンク・オブ・スコットランド(RBS)の株価が30%下落。ポンドも下落。
2008年10月8日 7日のNYダウはさらに暴落(終値9447.11ドル、-508.39ドル)
2008年10月8日 日経平均が史上ワースト3位の暴落。前日比952.58円安(9203.32、-9.38%)を記録。為替は1ドル99円台に。
2008年10月8日 欧米主要6中銀が0.5%緊急協調利下げ(米FFレート1.5%、ECB3.75%)。
2008年10月9日 ECBが過去最大規模の10兆円の資金緊急供給。
2008年10月9日 ニューシティ・レジデンス投資法人が東証上場REITとして初の破綻。負債1123億円。個人投資家8600人へ影響。
2008年10月9日 8日のNYダウが再び暴落、終値8579.19ドル(-678.91ドル、-7.3%)。GMの欧州での販売不振よりS&P格下げの可能性から経営不安が広がり、実体経済への影響を懸念した。
2008年10月10日 積極投資で知られていた中堅保険会社大和生命保険が経営破綻[29]。債務超過114億円、負債2695億円。
2008年10月10日 日経平均が暴落。終値は前日比881.06円安(-9.62%、過去3番目)の8276円(5年5ヶ月ぶり)。欧米ヘッジファンドの換金売りと言われるが、日本国内からのドル売りも考えられる。日経平均先物にはサーキットブレーカーが発動。アジア株も大幅下落。円高一時97円。東京株式市場時価総額268兆円、1年前530兆円のほぼ半額。
2008年10月10日 ロンドン、パリ、フランクフルト、ロシアの株式約10%下落。
2008年10月11日 先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)をワシントンで開催。5項目の行動計画を発表。
2008年10月13日 日米欧5中銀はドル資金を無制限供給すると発表(担保が必要)。
2008年10月13日 独仏が合計8600億ユーロ(約100兆円)を金融支援に投入すると発表。
2008年10月13日 NYダウ始値8462.42ドル、終値9387.61ドル(+936.42は同日時点で過去最大、+11.08%)。
2008年10月14日 日経平均が過去最大の上昇9447.57円(+1171.14円、+14.15%)、TOPIX956.30(+115.44)(13日は休日)。
2008年10月16日 バーナンキFRB議長が「金融市場が安定したとしても景気回復には時間がかかる」と発言。株価急落の原因の一つとされる。
2008年10月16日 景気後退懸念から急落。NYダウ 8577.91ドル(-733.08ドル、-7.87%)、英FTSE 4079.59(-314.62、-7.16%)、他独DAX -6.5%、西IBEX35 -5.1%、仏CAC40 -6.8%。
2008年10月16日 日経平均暴落、8458.45円(-1089.02円、-11.41%。ブラックマンデー以来2番目)。
2008年10月27日 日経平均の終値が7162.90円となり、バブル崩壊後最安値を更新。
2008年11月4日 アメリカ大統領選挙で民主党のバラク・オバマが勝利。
2008年12月11日 バーナード・L・マドフ(ナスダック元会長)、巨額投資詐欺の容疑で逮捕。被害総額は500億ドル超と見られる。

参考(Sources)

リーマン・ショック - Wikipedia
サブプライム住宅ローン危機の年表 - Wikipedia
サブプライム住宅ローン危機 - Wikipedia
Federal funds rate - Wikipedia
2008年9月16日 AIG救済 米政府管理下に - 日本経済新聞
米政府と連邦準備理事会(FRB)は2008年9月16日、米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の救済策を発表した。FRBがAIGに最大850億ドルの緊急融資を提供。つなぎ融資と約8割の株式取得の権利を組み合わせたパッケージで、AIGを事実上、政府の管理下に置く内容だった。15日のリーマン・ブラザ...
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日本経済新聞朝刊「きょうのことば」のバックナンバーを集めたページです。重要ニュースのキーワードを毎日ひとつ選び、解説しています。
2008年9月15日 リーマンが破綻 破産法適用申請 - 日本経済新聞
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  • Wikipedia(リーマン・ショック / サブプライム住宅ローン危機)
  • 日本経済新聞
  • ニッセイ基礎研究所
  • 各種市場データ

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