1987年2月、民営化された日本電信電話(NTT)が株式市場に上場しました。政府保有株の売却として実施された大型IPOは個人投資家の関心を一気に高め、日本株市場に「国民的投資ブーム」を生み出しました。
重要度(Importance Rating)
★★☆☆☆(重要度 2)
概要(Overview)
1987年2月9日、民営化後の日本電信電話(NTT)が東京、大阪、名古屋など国内の主要証券取引所に上場しました。NTT公式資料によると、初値は翌2月10日に160万円で形成されました。
第一次売り出し価格は119万7,000円で、買い注文が殺到したため上場初日は値がつかず、翌日に初値160万円をつけました。その後も人気は続き、上場後短期間で株価は大きく上昇しました。
この出来事は、単なる大型IPOではなく、個人投資家が株式市場へ本格的に参加するきっかけとなりました。「政府が売り出す株」という信頼感と、民営化企業への成長期待が重なり、投資ブームを加速させました。
本イベントの本質は、「民営化 → 政府保有株売却 → 個人資金流入 → 株式市場過熱」という市場構造の変化にあります。NTT上場は1980年代後半のバブル相場を象徴する重要イベントの一つです。
チャート(Nikkei225 Chart)
重要なポイント(Key Takeaways)
- 大型IPOは個人投資家の市場参加を一気に拡大させる
- 政府売出し株は「安全資産」に近い心理で受け止められやすい
- 需給が極端に偏ると、初値形成後に過熱相場が発生する
- 民営化は資本市場の拡大と財政資金調達を同時に進める政策手段となる
- 大型IPOブームはバブル形成の一部となる場合がある
詳細(Detail)
背景(Background)
NTTは、もともと日本電信電話公社(電電公社)として国が運営する公共企業でした。1980年代の行政改革の流れの中で、電電公社は民営化され、1985年4月に日本電信電話株式会社が設立されました。NTT公式資料でも、1985年4月の会社設立と1987年2月の上場が株式の歴史として整理されています。
当時の日本では、プラザ合意後の円高不況に対応するため金融緩和が進み、株式市場や不動産市場には資金が流入し始めていました。
この環境下でNTT株の売り出しは、「政府保有株の放出」「国民参加型の大型投資案件」「民営化企業の成長期待」という複数のテーマを同時に持つイベントとなりました。
つまり市場は、低金利による過剰流動性と、個人投資家の投資意欲が高まりやすい状態にありました。
NTT上場
1987年2月9日、NTT株は国内主要証券取引所に上場しました。初日は買い注文が殺到し、売買が成立せず、翌2月10日に初値160万円をつけました。
売り出し価格119万7,000円に対して初値160万円となったことで、投資家の間では「NTT株は儲かる」という認識が一気に広がりました。
この成功は、個人投資家の株式市場参加を大きく促し、証券会社の店頭には新規投資家が集まるようになりました。
個人投資家ブーム
NTT株は「政府が売り出す株」という安心感から、これまで株式投資に距離を置いていた層にも強く訴求しました。
大型IPOへの応募、抽選、初値高騰という一連の流れは、株式投資を一般家庭の話題にしました。
この結果、株式市場は機関投資家中心の場から、個人投資家を含む広い参加者の市場へと変化していきました。
市場心理は「株は一部の専門家が行うもの」から「個人も参加できる資産形成・投資対象」へと変わりました。
バブル相場への接続
NTT上場は、1980年代後半の日本株バブルの象徴的イベントとなりました。株価上昇への期待が個人投資家を呼び込み、資金流入がさらに株価を押し上げる循環が発生しました。
ただし、この循環はファンダメンタルズだけでなく、需給と期待に強く支えられていました。
その後、1987年10月のブラックマンデーや1989年末のバブルピークを経て、日本株市場は大きな転換を迎えます。
NTT株自体も、追加の政府保有株売却や市場環境の変化により、上場直後の熱狂から次第に調整局面へ移行しました。
影響(affect)
NTT上場は、投資家心理を「株式市場への関心拡大」へ大きく変えました。個人投資家が大型IPOへ参加する流れを作り、その後の民営化株や大型公募案件の前例となりました。
一方で、人気銘柄への資金集中は過熱を生みやすく、需給主導で価格が大きく上振れするリスクも示しました。
本イベントは、「政策イベント → 国民的関心 → 個人資金流入 → 市場過熱」という、バブル形成時に見られる典型的な市場パターンを示しています。
市場への影響(Market Impact)
- NTT初値:160万円(1987年2月10日)
- 売り出し価格:119万7,000円
- 市場心理:個人投資家の参加意欲が急拡大
- 株式市場:大型IPOブームとバブル相場を後押し
- 長期的影響:民営化株・政府保有株売却のモデルケースとなる
経緯(Timeline)
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 1985年4月 | 日本電信電話株式会社(NTT)設立 |
| 1986年10月〜1987年2月 | 政府保有のNTT株式195万株を売却 |
| 1987年2月9日 | NTT株が国内主要証券取引所に上場 |
| 1987年2月10日 | 初値160万円を形成 |
| 1987年春 | NTT株人気が個人投資家ブームを加速 |
| 1987年10月 | ブラックマンデー発生 |
| 1987年11月 | 政府保有のNTT株式195万株を追加売却 |
| 1988年10月 | 政府保有のNTT株式150万株を売却 |
| 1989年12月 | 日経平均がバブル期最高値を記録 |
参考(Sources)
- NTTグループ「株式の歴史」
- 楽天証券トウシル「民営化後、NTT株が株式公開」
- イミダス「初値」
- 各種市場資料


