インフレ・金融引締相場

phase

Market History DB / Market Phase

インフレ・金融引締相場

2021-02-17 – 2023-01-04

危機を救ったマネーが、今度は物価を動かした

コロナ危機を救った 大規模金融緩和と財政支援が、 経済再開とともに 需要回復を強く押し上げる一方、 Supply Chain、 半導体、 物流、 労働供給などの制約が残り、 世界経済は Deflation Riskから Inflation Riskへ移行したフェーズ。 当初「一時的」と考えられたインフレは 次第に持続性を強め、 FRBは ゼロ金利・QEによって市場を支える側から、 利上げ・QTによって 需要と物価を抑える側へ転換した。 さらに2022年には、 ロシアによるウクライナ侵攻が エネルギー・食料・資源価格を通じて インフレ圧力を増幅。 日本株では、 世界的な金融引締めという逆風の一方、 日銀の金融緩和継続と 日米金利差拡大による円安が 輸出企業利益を支えた。 Liquidity Expansionから Liquidity Withdrawalへ。 Growth Valuation Expansionから Valuation Compressionへ。 コロナ危機後の世界が 「経済再開」から 「インフレとの戦い」へ移った相場である。

2021年2月。

世界経済は、 コロナ危機から 抜け出そうとしていました。

ワクチン。

経済再開。

財政支援。

世界製造業の回復。

企業利益の回復。

Commodity価格の上昇。

コロナ流動性相場の終盤で、 市場はすでに Pandemicの先にある世界 を買い始めていました。

しかし、 経済が再び動き始めると、 別の問題が現れます。

需要は、 急速に戻りました。

しかし、 供給は 同じ速度では戻りませんでした。

工場。

物流。

コンテナ。

半導体。

労働力。

エネルギー。

世界中に Bottleneckが残っていました。

そこへ、 危機の間に供給された 大量のLiquidityと 巨額のFiscal Supportが 重なります。

需要が戻る。

供給が追いつかない。

価格が上がる。

そして、 それまで 市場を支えていた中央銀行自身が、 今度は 別の問題に直面します。

Inflation。

2020年、 中央銀行の仕事は 金融システムを守ることでした。

2022年、 中央銀行の仕事は 物価を抑えること へ変わります。

経済が止まったとき、 マネーは市場を救った。

しかし、 経済が再び動き始めると、

そのマネーが、 物価を動かし始めた。

  1. フェーズ概要
  2. 相場推移と主要イベント
      1. この期間の出来事
  3. このフェーズは、一方向の下落相場ではない
  4. 前フェーズとの断絶
  5. 最も重要なのは、中央銀行の役割が反転したこと
  6. Good News is Bad News
  7. インフレは、コロナ政策の単純な結果ではない
  8. 「Transitory」という期待
  9. Part1の結論
  10. 「一時的なインフレ」から、金融政策を変えるインフレへ
  11. 問題は、インフレの「高さ」だけではなかった
  12. 「Supply Chainが戻れば終わる」ではなくなった
  13. FRBの問題は「現在の物価」から「期待」へ移った
  14. Fed Pivot
  15. Taperingは、Liquidity Regime終了の最初のシグナルだった
  16. 2022年、FRBは本格的な金融引締めへ
  17. QTは「マネーの方向」をさらに変えた
  18. なぜ金利上昇でGrowth株が売られたのか
  19. 業績が悪化する前に、Valuationが下がる
  20. 市場の時間軸が短くなった
  21. GrowthからValueへのRotation
  22. しかし、Valueなら何でも上がるわけではない
  23. 市場の問いは「Inflation」から「Recession」へ近づいていく
  24. 日本株には、米国とは異なる力が働いた
  25. Part2の結論
  26. 2022年、Inflation Regimeに新しいShockが加わった
  27. Energyが、地政学の伝播経路になった
  28. FoodとCommodityにもShockが広がった
  29. Inflationの性質が、さらに複雑になった
  30. Ukraine WarはRegime Amplifierだった
  31. Fedは、Inflationとの戦いを優先した
  32. 「株価が下がればFedが助ける」という前提が弱くなった
  33. そして、日本では逆方向の金融政策が続いた
  34. 円安は、単なる為替イベントではなかった
  35. 日本株では「Inflation Winner」と「Inflation Loser」が分かれた
  36. 商社・資源株には、複数のDriverが重なった
  37. 銀行株にも金利という追い風が生まれた
  38. だから日本株は、米国Growth株と同じ相場にはならなかった
  39. ただし、円安が進み過ぎると政策問題になる
  40. BOJの政策そのものが、市場テーマになった
  41. 日本株では「名目利益」と「実質購買力」が分離した
  42. 2022年は「Inflation」と「Recession」を同時に考える相場になった
  43. Part3の結論
  44. 2022年後半、市場は「インフレの先」を見始めた
  45. Inflation PeakとFed Pivotは、同じものではない
  46. 市場が先に反応する理由
  47. 市場は「Level」より「Direction」を見る
  48. 2022年は、Leadershipが何度も入れ替わった
  49. 「Growthが終わった」のではない
  50. 日本株では「円安=全面的な追い風」でもなかった
  51. 企業を見る基準が変わった
  52. 名目成長と実質成長を分けて考える
  53. そして市場は「Soft Landing」を探し始めた
  54. Bad News is Good Newsへ
  55. しかし、Bad Newsが悪すぎれば本当にBad Newsになる
  56. 2022年末、もう一つの変化が日本で起きた
  57. ただし、これはまだ日本の金融引締めではない
  58. ここで、このフェーズの内部構造が完成する
  59. Part4の結論
  60. 古いレジームの中で、次の相場の種が生まれていた
  61. 2022年11月30日、ChatGPTが公開された
  62. しかし、ChatGPT公開をフェーズ転換点にはしない
  63. もう一つのSeedは、日本自身の中にあった
  64. 2022年12月の日銀政策修正は、重要なTransition Signalだった
  65. ここから「金融正常化移行期」への扉が開く
  66. そして最初に株式市場が評価したのは「資本効率」だった
  67. これは「安い日本株」を買う相場とは違う
  68. AIは、そこへ重なってくる
  69. なぜ2023年1月5日から別フェーズなのか
  70. 二つのレベルで転換が起きる
  71. インフレ・金融引締相場とは何だったのか
  72. このフェーズが残したもの
  73. この相場を一文で定義するなら
  74. そして、日本株は次の時代へ

フェーズ概要

  • Market Cycle: グローバル流動性・インフレ転換サイクル
  • Market Phase: インフレ・金融引締相場
  • 期間: 2021年2月17日 ~ 2023年1月4日
  • Human Theme: 危機を救ったマネーが、今度は物価を動かした
  • 主要構造: Economic Reopening → Demand Recovery → Supply Constraint → Inflation → Fed Tightening → Yield Rise → Valuation Compression
  • 主要Driver: Reopening / Fiscal Expansion / Supply Constraint / Inflation / Fed Tightening / QT / Yield Repricing / Ukraine War / Energy Shock / Yen Depreciation
  • 中心テーマ: Liquidity ExpansionからLiquidity Withdrawalへ
  • 市場心理: 経済再開への期待から、インフレ長期化と金融引締めへの警戒へ
  • 内部矛盾: 企業利益回復と名目成長は株価を支える一方、同じ景気回復がインフレと金利上昇を生み、Valuationを圧迫
  • 次レジームへの兆候: 2022年末に生成AIという新しいStructural Growth Driverが出現

相場推移と主要イベント

本フェーズの日経平均株価と主要イベントです。 2021年2月の 経済再開・Reflation期待から、 世界的なSupply Chain制約、 半導体不足、 Commodity価格上昇、 インフレ加速、 FRBのTaperingと金融政策転換、 2022年の利上げ開始、 ロシアによるウクライナ侵攻、 Energy / Food Shock、 急速な米長期金利上昇、 円安進行、 世界的なGrowth株調整、 日銀の金融緩和継続、 そして2022年末の 金融政策・景気後退懸念まで、 Liquidity Expansionから Monetary Tighteningへ移行した 市場構造の変化を確認できます。

初期表示:2021-02-17 〜 2023-01-04 / 取得範囲:1950-01-01 〜 2026-08-21 / イベント重要度:1以上

この期間の出来事

このフェーズは、一方向の下落相場ではない

インフレ・金融引締相場を 理解するとき、 最初に重要なのは、 この約2年間を 単純なBear Market として見ないことです。

日経平均は、 上昇する。

下落する。

戻る。

また下落する。

複数回の大きな 振幅を繰り返します。

なぜなら、 Positive Driverと Negative Driverが 同時に存在したからです。

Positive Driverは、 経済再開。

企業利益回復。

世界製造業。

円安。

Nominal Earnings。

一方、 Negative Driverは、 Inflation。

Fed Tightening。

Yield Rise。

QT。

Ukraine War。

Global Growth Slowdown。

つまり、 利益が良くなることと、 株価のDiscount Rateが悪化することが 同時に起きた。

これが、 本フェーズの価格形成を 複雑にしました。

景気回復は、 企業利益には追い風だった。

しかし同じ景気回復が、

インフレと金利を通じて 株価の上値を抑えた。

前フェーズとの断絶

コロナ流動性相場と インフレ・金融引締相場では、 市場の政策構造が ほぼ逆転しています。

コロナ流動性相場 インフレ・金融引締相場
Economic Shutdown Economic Reopening
Demand Collapse Demand Recovery
Deflation Risk Inflation Risk
Emergency Easing Monetary Tightening
Zero Rate Rate Hikes
QE QT
Yield Compression Yield Repricing
Liquidity Expansion Liquidity Withdrawal
Growth Leadership Growth Valuation Compression
Policy Support Policy Restraint

最も重要なのは、中央銀行の役割が反転したこと

2020年の市場では、 中央銀行は 株式市場にとって 明確なPositive Driverでした。

金融市場が不安定になる。

FRBがLiquidityを供給する。

金利が下がる。

Credit Marketが安定する。

Risk Premiumが下がる。

株価が上がる。

市場参加者は、 Don’t Fight the Fed を学びました。

しかし、 Inflationが問題になると、 その関係は逆になります。

雇用が強い。

賃金が上がる。

消費が強い。

物価が上がる。

FRBは 利上げを続ける。

金利が上がる。

Liquidityが減る。

株価のValuationが 圧迫される。

つまり、 中央銀行が 市場の下値を守る存在から、 市場のValuationを抑える存在へ 変わりました。

2020

Economic Weakness

More Easing

Lower Yield

Higher Valuation

━━━━━━━━━━

2021-2022

Strong Demand / Inflation

More Tightening

Higher Yield

Lower Valuation

Good News is Bad News

この政策反応の変化によって、 市場では それまでとは逆の現象が 起きるようになります。

強い雇用統計。

強い賃金。

強い消費。

本来であれば、 企業利益にとって 良いニュースです。

しかし、 Inflation Regimeでは、 その強さが FRBの金融引締めを 長期化させます。

すると、 長期金利が上昇する。

Discount Rateが上昇する。

Growth株が売られる。

株価が下がる。

つまり、 Good Economic Newsが Bad Market Newsへ変わる ことがあります。

2020年には、 悪い景気が 良い政策を呼んだ。

2022年には、

良い景気が 厳しい政策を呼んだ。

インフレは、コロナ政策の単純な結果ではない

ただし、 インフレを 「金融緩和しすぎたから」 だけで説明することも 適切ではありません。

複数のDriverが 重なりました。

Fiscal Support。

Pent-up Demand。

Economic Reopening。

Supply Chain Disruption。

半導体不足。

物流制約。

労働供給制約。

Commodity価格上昇。

そして後には、 Ukraine War。

つまり、 Demand ShockとSupply Shockが 同時に存在した ことが重要です。

Fiscal Support

Pent-up Demand

Economic Reopening

Demand Recovery

━━━━━━━━━━

Supply Chain Disruption

Labor Constraint

Semiconductor Shortage

Commodity Pressure

Supply Constraint

━━━━━━━━━━

Demand > Supply

Inflation

「Transitory」という期待

2021年初期には、 物価上昇が 一時的であるという見方が 強く存在しました。

経済再開による 需要集中。

Supply Chainの混乱。

Base Effect。

これらが解消すれば、 Inflationは 自然に低下する。

しかし、 時間が経過しても、 物価上昇圧力は 簡単には消えませんでした。

財からサービスへ。

EnergyからHousingへ。

一部の商品から 賃金へ。

Inflationの範囲が 広がります。

そして、 市場の問いは 「インフレは一時的か」 から、

「FRBは、 どこまで引き締めなければならないのか」 へ変わっていきます。

Part1の結論

インフレ・金融引締相場は、 コロナ流動性相場と 切り離された相場ではありません。

むしろ、 前フェーズの成功条件が そのまま次の問題を 作りました。

大量のLiquidity。

ゼロ金利。

Fiscal Support。

これらによって、 金融システムは 危機を乗り越えました。

そして、 VaccineとReopeningによって 需要が戻りました。

しかし、 Supplyは 同じ速度では戻りませんでした。

Demand > Supply。

その差が Inflationを生みました。

そして、 Inflationが 中央銀行の役割を変えます。

2020年、 FRBは 市場へLiquidityを供給しました。

2022年、 FRBは そのLiquidityを 引き締め始めます。

市場を救う政策から、 物価を抑える政策へ。

これが、 本フェーズ最大の Regime Changeです。

危機を救った政策が、 経済を再び動かした。

経済が動くと、 物価が上がった。

そして、

物価を止めるために、 中央銀行は 自らが供給したLiquidityを 引き締め始めた。

次のPartでは、 2021年の Reopening Inflationから、 Transitory Inflationという見方が どのように崩れていったのか。

そして、 FRBのTapering。

金融政策転換。

2022年のRate Hike Cycle。

QT。

さらに、 なぜ金利上昇が Growth株のValuationを 大きく圧迫したのか を、 Discount Rateと Durationの構造から 整理します。

Part 2

「一時的なインフレ」から、金融政策を変えるインフレへ

2021年。

世界経済が コロナ危機から再開すると、 物価上昇が 急速に目立ち始めました。

しかし当初、 このインフレは Transitory ――一時的なもの―― と考えられていました。

理由は 明確でした。

前年の価格下落との比較による Base Effect。

経済再開に伴う 一時的な需要集中。

Supply Chainの混乱。

半導体不足。

物流制約。

つまり、 Pandemicによって 一時的に壊れたSupplyが戻れば、 物価上昇率も 自然に低下する。

そのシナリオが 想定されていました。

しかし、 時間が経過しても、 Inflationは 簡単には消えませんでした。

問題は、インフレの「高さ」だけではなかった

相場にとって重要だったのは、 CPIの数字が 高くなったことだけではありません。

より重要だったのは、 インフレの範囲が 広がり始めたこと です。

当初、 価格上昇は 中古車。

半導体。

輸送費。

一部の商品。

など、 Pandemicによる Supply Constraintと 結びつきやすい領域で 目立っていました。

しかし次第に、 物価上昇は より広い領域へ 波及していきます。

Energy。

Housing。

Services。

Food。

Wage。

一部の商品の 価格上昇ではなく、 経済全体へ Inflation Pressureが 広がり始めます。

Goods Inflation

Energy / Housing

Services Inflation

Wage Pressure

Broad Inflation

Persistent Inflation Risk

「Supply Chainが戻れば終わる」ではなくなった

Supply Chainだけが Inflationの原因なら、 物流が正常化すれば 問題は収束します。

しかし、 賃金やサービス価格まで 上昇し始めると、 話は変わります。

企業の人件費が上がる。

企業が 販売価格へ転嫁する。

家計は 物価上昇を意識する。

労働者は より高い賃金を求める。

企業は さらにコストを転嫁する。

こうした循環が形成されれば、 Inflationは 一時的なSupply Shockから、 経済内部に残るPersistent Inflation へ変わる可能性があります。

中央銀行にとって、 ここが 決定的な違いでした。

一時的な物価上昇なら、 中央銀行は 待つことができる。

しかし、

インフレが経済内部へ定着するなら、 待つこと自体がリスクになる。

FRBの問題は「現在の物価」から「期待」へ移った

中央銀行が 恐れるのは、 現在の物価が 一時的に高いことだけではありません。

より重要なのは、 企業や家計が 「これからも物価は上がる」 と考え始めることです。

Inflation Expectationが 変われば、 経済主体の行動も 変わります。

企業は、 将来のコスト上昇を見越して 価格を上げる。

労働者は、 将来の物価上昇を見越して 賃上げを求める。

家計は、 将来値上がりするなら 今買おうと考える。

こうして、 期待そのものが Inflationを持続させる可能性が 生まれます。

そのため、 FRBにとって重要なのは、 単にInflationが いつ下がるかではなく、 Inflation Expectationを Anchoredな状態に保てるか でした。

Fed Pivot

2021年後半。

市場は次第に、 FRBの政策が 永遠に緩和的ではないことを 意識し始めます。

コロナ危機では、 政策の問いは 「どこまで緩和するか」 でした。

しかし、 Inflationが持続すると、 問いは 「いつ緩和を終えるのか」 へ変わります。

そして、 さらにその先では、

「どこまで引き締めるのか」 へ変わります。

Emergency Easing

QE Continuation

Taper Discussion

Tapering

QE End

Rate Hikes

QT

これは、 単なる政策変更ではありません。

市場へ供給される Liquidityの方向が 反転した ということです。

Taperingは、Liquidity Regime終了の最初のシグナルだった

QEでは、 中央銀行が 国債などの資産を購入します。

その結果、 中央銀行Balance Sheetが 拡大します。

金融市場へ Liquidityが供給されます。

長期金利には 低下圧力がかかります。

そして、 低い金利は 株式などのRisk Assetを 支えます。

Taperingとは、 その資産購入額を 徐々に減らすことです。

つまり、 金融緩和を いきなり逆回転させるのではなく、 まず、 Liquidityを増やす速度を 落とす ことです。

市場にとって重要なのは、 その先に QE終了。

利上げ。

Balance Sheet縮小。

が存在することでした。

Taperingは、 Liquidityが 減り始めることではない。

Liquidityが増え続ける世界の 終わりを示すシグナルだった。

2022年、FRBは本格的な金融引締めへ

2022年に入ると、 FRBの政策は さらに大きく変化します。

Inflationは 高止まりしました。

労働市場も 強さを維持しました。

そして、 FRBは 利上げを開始します。

問題は、 利上げをしたことだけではありません。

その 速度 です。

市場は、 長期間続いた 低金利環境から、 急速な金融引締めへ 適応する必要がありました。

政策金利の 将来予想が上がる。

国債利回りが上がる。

企業の資金調達コストが上がる。

住宅ローン金利が上がる。

Risk Assetの Discount Rateが上がる。

つまり、 金融政策は Wall Streetだけでなく、 実体経済全体へ 引締め効果を 伝え始めました。

QTは「マネーの方向」をさらに変えた

利上げと並んで 重要だったのが、 Quantitative Tightening です。

QEでは、 中央銀行Balance Sheetが 拡大します。

QTでは、 そのBalance Sheetを 縮小方向へ向かわせます。

つまり、 コロナ危機で行われた Liquidity Expansionの逆方向 です。

2020

QE

Balance Sheet Expansion

Liquidity Expansion

Yield Compression

Risk Asset Re-rating

━━━━━━━━━━

2022

QT

Balance Sheet Reduction

Liquidity Withdrawal

Yield Repricing

Risk Asset De-rating

なぜ金利上昇でGrowth株が売られたのか

2022年の市場を理解するうえで、 非常に重要なのが Discount Rate です。

株式の価値は、 企業が将来生み出すCash Flowを 現在価値へ割り引くことで 考えることができます。

金利が低ければ、 遠い将来のCash Flowも 高い現在価値を持ちます。

このため、 将来の高い成長を期待される Growth企業は、 低金利環境で 高いValuationを 正当化しやすくなります。

しかし、 金利が上昇すると、 遠い将来のCash Flowほど 現在価値が 大きく低下します。

つまり、 Growth株は Interest Rate Durationが長いAsset として振る舞います。

Higher Interest Rate

Higher Discount Rate

Lower Present Value of Future Cash Flow

Long Duration Asset Pressure

Growth Valuation Compression

業績が悪化する前に、Valuationが下がる

ここで重要なのは、 Growth株が売られるために、 必ずしも 企業利益が先に悪化する必要はない ということです。

企業の成長率が 変わらなくても、 市場が適用する Discount Rateが上がれば、 株価は下がります。

つまり、 2022年のGrowth株調整は、 単純な 「業績悪化」 だけではなく、 Valuation Regime Change として理解する必要があります。

コロナ流動性相場では、 低金利が Valuation Expansionを 支えました。

インフレ・金融引締相場では、 金利上昇が Valuation Compressionを 引き起こします。

低金利レジーム 金利上昇レジーム
Discount Rate低下 Discount Rate上昇
将来Cash Flowの価値上昇 将来Cash Flowの価値低下
Long Duration優位 Long Duration逆風
Growth優位 Growth Valuation調整
PER Expansion PER Compression
遠い未来を買う 現在の利益・Cash Flowを重視

市場の時間軸が短くなった

低金利の世界では、 市場は 遠い未来を買うことができます。

5年後。

10年後。

その企業が どれだけ成長しているか。

将来の巨大な市場を どれだけ獲得できるか。

こうしたStoryが 高いValuationを 支えることができます。

しかし、 金利が上昇すると、 市場の時間軸は 短くなります。

今、 利益を出しているか。

今、 Cash Flowがあるか。

今、 価格転嫁できるか。

今、 株主へCashを返せるか。

こうした要素の 重要性が高まります。

低金利は、 遠い未来を 高く評価する。

金利上昇は、

「今、稼いでいる企業」の価値を 相対的に高める。

GrowthからValueへのRotation

この変化によって、 市場Leadershipにも 変化が起きます。

コロナ流動性相場では、 Technology。

Digital。

High Growth。

Long Duration。

といったAssetが 市場の中心でした。

しかし、 Inflationと 金利上昇が進むと、 市場は より現在利益の大きい企業、 価格転嫁力を持つ企業、 Inflationの恩恵を受ける企業へ 注目するようになります。

Energy。

Financial。

Commodity。

Trading Companies。

一部のCyclical。

こうした企業群の 相対的な強さが 高まりました。

これは、 単なるセクターRotationではありません。

Discount Rate Regimeの変化が、 市場の「何を高く評価するか」を変えた ということです。

しかし、Valueなら何でも上がるわけではない

ここも重要です。

金利上昇だから Growthが売られる。

だから Valueを買えばいい。

という単純な相場ではありません。

金融引締めには、 時間差があります。

最初は、 金利上昇が Valuationを圧迫します。

しかし、 引締めが続けば、 次に市場が考えるのは Economic Slowdown です。

金利上昇。

住宅需要減速。

企業投資減速。

消費減速。

Credit Conditions悪化。

こうして、 Inflationを抑えるための政策が、 やがて 景気そのものを 減速させ始めます。

Inflation

Rate Hikes

Financial Conditions Tightening

Demand Slowdown

Earnings Risk

Recession Fear

市場の問いは「Inflation」から「Recession」へ近づいていく

2021年、 市場の問いは、

「インフレは一時的なのか」

でした。

2022年に入ると、 問いは、

「FRBはどこまで利上げするのか」

へ変わります。

そして、 金融引締めが進むにつれ、 さらに別の問いが 現れます。

「インフレを止めるために、 景気をどこまで悪化させる必要があるのか」

です。

つまり、 市場が恐れるものは、 Inflationだけでは なくなっていきます。

Inflationを止めるための Monetary Tightening。

そして、 そのTighteningが引き起こす Economic Slowdown。

この二つのRiskを 同時に価格形成する相場へ 移っていきます。

日本株には、米国とは異なる力が働いた

ここまでの構造は、 主にGlobal Market、 特に米国金融政策を中心とした 構造です。

しかし、 日本株には もう一つの重要な要素があります。

日本銀行です。

FRBが 金融緩和を終了し、 利上げとQTへ 向かう一方、 日本銀行は 金融緩和を継続しました。

つまり、 世界最大級の中央銀行同士で 政策方向の 大きな乖離が生まれます。

FRB

Rate Hikes / QT

US Yield Rise

━━━━━━━━━━

BOJ

Monetary Easing

Japan Yield Suppression

━━━━━━━━━━

Rate Differential Expansion

Yen Depreciation

この政策差が、 次第に 日本株特有の 巨大なDriverを生み出します。

円安です。

そして、 この円安が 日本企業の利益、 輸入Inflation、 日銀政策、 日本株のSector Leadershipを 大きく変えていくことになります。

Part2の結論

このフェーズで起きた 最も重要な変化は、 Inflationそのものではありません。

Inflationによって、 金融政策の方向が反転したこと です。

2020年、 FRBは 市場を救うために 金利を下げました。

QEを行いました。

Liquidityを供給しました。

2021年、 そのLiquidity Expansionを 止める準備を始めました。

2022年、 利上げとQTによって 本格的な Monetary Tighteningへ移ります。

そして、 金利上昇は 株式市場の Discount Rateを変えました。

遠い未来の成長を 高く評価する市場から、 現在の利益と Cash Flowを重視する市場へ。

Growth Valuation Expansionから、 Growth Valuation Compressionへ。

しかし、 金融引締めが進めば、 次の問題が現れます。

Economic Slowdown。

Recession Risk。

そして日本では、 FRBとBOJの政策差による 急速な円安。

さらに、 世界のInflationへ 新しいSupply Shockが加わります。

インフレは、 金利を変えた。

金利は、 Valuationを変えた。

そして、

Valuationの変化が、 市場の主役を変え始めた。

次のPartでは、 2022年2月。

ロシアによる ウクライナ全面侵攻。

Energy。

Natural Gas。

Oil。

Food。

Commodity。

すでに進行していた Inflation Regimeへ、 Geopolitical Supply Shockが どのように重なったのか。

そして、 世界的な金融引締めの中で、 なぜ日本では 歴史的な円安が進行したのか を、 FRBとBOJの 政策乖離から整理します。

Part 3

2022年、Inflation Regimeに新しいShockが加わった

2022年に入る時点で、 Inflationは すでに世界経済の 中心問題になっていました。

Economic Reopening。

Pent-up Demand。

Fiscal Expansion。

Supply Chain Disruption。

Labor Constraint。

Commodity価格上昇。

つまり、 Inflation Regimeは ロシアによる ウクライナ全面侵攻より前から 形成されていました。

しかし、 2022年2月24日。

ロシアによる ウクライナ全面侵攻が始まると、 既存のInflation Regimeへ 新しいSupply Shock が加わります。

戦争が、 Inflationをゼロから作ったのではない。

すでに存在していたInflationへ、 新しいSupply Shockを重ねた。

Energyが、地政学の伝播経路になった

ロシアと欧州の経済関係で、 特に重要だったのが Energyです。

Natural Gas。

Oil。

Coal。

世界経済は、 Energyを通じて ロシアと深く接続していました。

そのため、 軍事衝突と制裁が 始まると、 市場は 単なる戦争Riskだけではなく、 Energy Supplyそのものが どうなるのか を考え始めます。

供給が減るのか。

輸送が止まるのか。

制裁が拡大するのか。

欧州は 代替調達できるのか。

こうした不確実性が、 Energy価格へ Risk Premiumを上乗せしました。

Russia-Ukraine War

Energy Supply Risk

Economic Sanctions

Oil / Gas Price Pressure

Energy Inflation

Global Inflation Persistence

FoodとCommodityにもShockが広がった

影響は Energyだけではありません。

穀物。

肥料。

金属。

物流。

複数のCommodityへ 影響が広がりました。

ここで重要なのは、 Commodity価格が 企業コストだけではなく、 家計の生活コストへ 直接影響することです。

Energy価格が上がる。

輸送費が上がる。

食品価格が上がる。

企業の仕入れ価格が上がる。

企業は 販売価格へ転嫁する。

こうして、 Supply Shockは 企業利益と消費者物価の 両方へ波及する ことになります。

Commodity Shock

Input Cost Rise

Corporate Margin Pressure

Price Pass-through

Consumer Inflation

Real Income Pressure

Inflationの性質が、さらに複雑になった

ここで、 中央銀行にとって 難しい問題が生まれます。

金融政策は、 需要を抑えることはできます。

しかし、 Natural Gasを 増産することはできません。

Oil Supplyを 直接増やすこともできません。

港湾を 正常化することもできません。

戦争を 終わらせることもできません。

つまり、 Inflationの一部は Monetary Policyでは 直接解決できないSupply Shock でした。

それでも、 Inflation全体が高止まりすれば、 中央銀行は 何もしないわけにはいきません。

なぜなら、 Supply Shockをきっかけに Inflation Expectationや Wageが上昇し、 需要側へ Inflationが定着する可能性があるからです。

中央銀行は、 Oilを作ることはできない。

しかし、

Oil高から始まったInflationが、 経済全体へ定着することは 止めなければならない。

Ukraine WarはRegime Amplifierだった

Market History DBでは、 ロシア・ウクライナ侵攻を インフレ・金融引締相場の 起点とは考えません。

Inflationは すでに存在していました。

FRBの政策転換も すでに始まっていました。

したがって、 このイベントの役割は Phase Start ではありません。

より適切なのは、 Regime Amplifier です。

既存のInflationを より高くする。

より長くする。

そして、 金融引締めを より強くする。

つまり、 市場レジームの 方向そのものを変えたのではなく、 すでに進んでいた方向を さらに強めた と考えます。

MHDB Interpretation

Reopening → Demand Recovery → Supply Constraint → Inflation

そこへ、

Ukraine War → Energy / Food / Commodity Shock → Inflation Persistence → Stronger Tightening Pressure

Ukraine War = Regime Amplifier

Fedは、Inflationとの戦いを優先した

2022年、 FRBは 金融引締めを 急速に進めます。

利上げ。

Balance Sheet縮小。

金融条件の引締め。

市場にとって重要なのは、 単に政策金利の数字ではありません。

FRBの優先順位が 変わったこと です。

コロナ危機では、 最大のRiskは Economic Collapseでした。

そのため、 市場の下落や 景気悪化は、 追加緩和の理由に なりました。

しかし、 Inflation Regimeでは、 景気が多少弱くなっても、 Inflationが高ければ 金融引締めを 続ける必要があります。

つまり、 市場は Fed Putが以前ほど近くにない ことを 意識するようになります。

「株価が下がればFedが助ける」という前提が弱くなった

コロナ流動性相場では、 市場が不安定になるほど、 中央銀行の政策支援期待が 高まりました。

しかし、 Inflationが高い状態では、 中央銀行に 同じ自由度はありません。

株価が下がった。

だから、 すぐ利下げする。

QEを再開する。

そうすれば、 Inflationを さらに悪化させる可能性があります。

つまり、 中央銀行は 金融市場安定と 物価安定の間で、 以前より 厳しい制約を受けます。

コロナ流動性相場 インフレ・金融引締相場
Market Stress → Easing Market StressでもInflationが高ければTightening継続
Fed Putが近い Fed Putが遠い
Asset Price Stability重視 Price Stability重視
Liquidity Supply Liquidity Withdrawal
Risk Premium Compression Risk Premium Repricing

そして、日本では逆方向の金融政策が続いた

ここで、 日本株にとって 極めて重要な構造が生まれます。

米国では、 Inflationを抑えるために 金融引締めが進みました。

しかし、 日本銀行は 金融緩和を継続しました。

短期金利は 低い。

長期金利も YCCによって 低く抑えられる。

つまり、 米国と日本で 金融政策の方向性が 大きく分かれた のです。

United States

Inflation

Fed Tightening

US Yield Rise

━━━━━━━━━━

Japan

BOJ Easing

Japan Yield Suppression

━━━━━━━━━━

Policy Divergence

Rate Differential Expansion

Yen Depreciation

円安は、単なる為替イベントではなかった

円安は、 日本株へ 複数の経路で作用しました。

第一に、 輸出企業の 海外利益を 円換算したときの金額が増えます。

自動車。

機械。

電子部品。

海外売上比率の高い企業には、 利益面で Positiveに働く場合があります。

第二に、 輸入価格が上昇します。

Energy。

Food。

Raw Materials。

海外から買うものの 円建て価格が上がります。

つまり、 円安は Export Earnings Support であると同時に、 Imported Inflation でもありました。

円安のPositive Side 円安のNegative Side
海外利益の円換算増加 輸入価格上昇
輸出企業EPSを支援 Energy Cost上昇
海外売上企業に追い風 原材料Cost上昇
Nominal Earnings押し上げ 家計購買力を圧迫
外国人から見た日本資産価格低下 国内Inflation圧力

円安は、 日本企業を 一律に強くしたわけではない。

海外で稼ぐ企業には追い風となり、 海外から買う企業と家計には 逆風となった。

日本株では「Inflation Winner」と「Inflation Loser」が分かれた

Inflation Regimeでは、 企業の強さを測る基準も 変わります。

重要になるのは、 Pricing Power です。

原材料価格が上がる。

人件費が上がる。

物流費が上がる。

そのとき、 企業が販売価格へ Costを転嫁できるか。

転嫁できる企業は、 Marginを守ることができます。

転嫁できない企業は、 売上が増えても 利益率が 低下する可能性があります。

つまり、 Inflation Regimeでは、 売上成長率だけでなく、 Price Pass-through Ability が 企業価値を左右します。

Inflation Resistant Inflation Vulnerable
Pricing Powerが強い 価格転嫁が難しい
Commodity Exposureを持つ 原材料輸入依存が高い
円安恩恵が大きい 円安Cost負担が大きい
Current Cash Flowが強い 将来利益依存が大きい
低Valuation High Duration / High Valuation

商社・資源株には、複数のDriverが重なった

このフェーズでは、 商社や資源関連企業が 重要な存在になります。

Commodity価格上昇。

Energy価格上昇。

円安。

Nominal Earnings拡大。

複数のDriverが 同じ方向へ作用しやすいためです。

コロナ流動性相場では、 TechnologyやGrowthが 市場の中心でした。

しかし、 Inflation Regimeでは、 実物資産・Commodity・Current Earnings を持つ企業の 相対的な価値が高まります。

これは、 市場が評価するものが 「遠い未来の成長」 から、 「今存在するCash Flow」 へ移ったこととも 整合します。

銀行株にも金利という追い風が生まれた

金利上昇は、 すべての株式に Negativeではありません。

銀行など 金融機関にとっては、 極端な低金利環境が 長期間続くこと自体が 収益構造を 圧迫することがあります。

そのため、 金利正常化への期待は、 一部の金融株にとって Positive Driverになります。

つまり、 Yield Rise は、 Growth Valuationには逆風でも、 Financial Sectorには 別の意味を持つことがあります。

ここでも、 一つのMacro Driverが すべての銘柄へ 同じ方向に働くわけではありません。

金利上昇は、 株式市場全体に 同じ意味を持たない。

誰のCash Flowを どう変えるのかで、 意味は変わる。

だから日本株は、米国Growth株と同じ相場にはならなかった

2022年の相場を見ると、 米国では High Valuation Growth株への 下落圧力が目立ちました。

しかし、 日本株全体を 同じ構造だけで 説明することはできません。

日本市場には、 自動車。

商社。

銀行。

機械。

素材。

製造業。

Current Earningsを 生み出す企業が 多く存在します。

さらに、 円安。

Commodity。

Nominal Growth。

といった 日本独自のDriverもありました。

したがって、 本フェーズの日本株は、 Global Discount Rate上昇による逆風と、 Nominal Earnings / Yen Depreciationによる追い風が 同時に存在した市場 と整理できます。

ただし、円安が進み過ぎると政策問題になる

円安は、 輸出企業に 利益面の追い風を与えます。

しかし、 円安が急速に進めば、 輸入Inflationを通じて 企業と家計の負担を 大きくします。

Energy。

Food。

Raw Materials。

日本は 海外から多くを輸入しています。

そのため、 円安が進み過ぎると、 企業業績だけではなく、 家計の実質購買力と 国内物価 の問題になります。

すると、 為替は 単なるMarket Priceではなく、 政治・政策上の 重要問題になります。

Policy Divergence

Yen Depreciation

Import Price Rise

Domestic Inflation

Real Income Pressure

Policy / Political Pressure

BOJの政策そのものが、市場テーマになった

世界の主要中央銀行が 金融引締めへ向かう中で、 日本銀行が 金融緩和を続けたことによって、 市場では次第に BOJはいつまで この政策を維持できるのか という問いが 強くなります。

日本のInflationが 上昇する。

海外金利が 上昇する。

円安が進む。

それでも、 日本の長期金利を 低く抑え続けるのか。

こうして、 YCCそのものが 日本株、 為替、 債券市場を結ぶ 重要なDriverになります。

Japan Policy Triangle

BOJ Easing → Low JGB Yield

Fed Tightening → High US Yield

Yen Depreciation

Imported Inflation

Pressure on YCC Sustainability

日本株では「名目利益」と「実質購買力」が分離した

Inflationと円安には、 もう一つ重要な特徴があります。

企業のNominal Earningsが 増えていても、 家計の購買力が 同じように増えるとは限りません。

円安によって 海外利益が増える。

Commodity価格上昇によって 資源企業利益が増える。

販売価格引き上げによって 企業売上が増える。

株式市場から見れば、 Nominal Earningsは 強く見える場合があります。

一方で、 賃金の伸びより 物価上昇が強ければ、 家計の Real Purchasing Power は低下します。

つまり、 企業利益と 家計景況感が 同じ方向へ動かないことがあります。

名目では、 企業利益が増える。

しかし実質では、

家計が豊かになっているとは限らない。

2022年は「Inflation」と「Recession」を同時に考える相場になった

2022年前半、 市場最大の問題は Inflationでした。

しかし、 金融引締めが進むほど、 次第に 別のRiskが強くなります。

Recessionです。

金利を上げる。

住宅需要が弱くなる。

企業投資が鈍る。

消費が弱くなる。

Financial Conditionsが 引き締まる。

つまり、 Inflationを止める政策そのものが、 景気減速を 生み出します。

こうして市場は、 Inflation Risk Recession Risk の間を 行き来するようになります。

Inflation Fear

Fed Tightening

Yield Rise

Valuation Compression

━━━━━━━━━━

Tight Financial Conditions

Growth Slowdown

Earnings Risk

Recession Fear

Part3の結論

2022年、 Inflation Regimeは さらに強くなりました。

その原因は、 ロシア・ウクライナ侵攻だけではありません。

Inflationは、 Reopening。

Demand Recovery。

Fiscal Support。

Supply Constraint。

Labor Shortage。

によって、 すでに形成されていました。

そこへ、 Ukraine Warが Energy。

Food。

Commodity。

という 新しいSupply Shockを加えました。

つまり、 Ukraine Warは Inflation Regimeを 長期化・増幅するAmplifier でした。

そして、 Inflationが強くなるほど、 FRBは 金融引締めを 続ける必要がありました。

一方、 日本銀行は 金融緩和を継続しました。

その政策乖離が 日米金利差を広げ、 円安を進めます。

円安は、 輸出企業利益を支える一方、 Import Inflationを 強めました。

したがって、 日本株では、 Global Tighteningの逆風と 円安・Commodity・Nominal Earningsの追い風が 同時に存在しました。

これが、 2022年の日本株を 米国Growth株と 同じ構造では説明できない理由です。

世界では、 金利が上がった。

日本では、 金利を抑えた。

その差が、 円を動かした。

そして、

円の変化が、 日本株のWinnerとLoserを 分けた。

次のPartでは、 この相場を もう一段深く掘り下げます。

Inflation Winner。

Inflation Loser。

Energy。

商社。

銀行。

自動車。

半導体。

Growth。

そして、 2022年後半に Inflation Peak期待と Fed Pivot期待が どのように市場へ入り始めたのか。

さらに、 「Inflationが下がるなら、 株価は再び上がれるのか」 という 次の市場の問いを整理します。

Part 4

2022年後半、市場は「インフレの先」を見始めた

2022年前半。

市場最大のテーマは、 Inflationでした。

CPIは どこまで上がるのか。

FRBは どこまで利上げするのか。

長期金利は どこまで上がるのか。

その結果、 Valuationは どこまで下がるのか。

市場参加者は、 Inflationと Monetary Tighteningを ほぼ同時に 価格形成していました。

しかし、 金融引締めが進むにつれて、 市場の視線は 少しずつ先へ移ります。

このInflationは、 いつPeakを迎えるのか。

そして、 InflationがPeakを迎えるなら、

FRBのTighteningも、 いつかPeakを迎えるのではないか。

市場の問いが 変わり始めました。

市場は、 インフレが終わってから 次の相場を考えるのではない。

インフレが終わる可能性を、 その前から価格にする。

Inflation PeakとFed Pivotは、同じものではない

ここで、 二つの概念を 分ける必要があります。

Inflation Peak。

そして、 Fed Pivot。

Inflation Peakとは、 物価上昇率の加速が Peakを迎えることです。

しかし、 物価上昇率が 低下し始めたからといって、 すぐにFRBが 利下げへ転じるわけではありません。

Inflationが、 8%から7%へ 下がったとしても、 それが中央銀行の目標から 大きく離れていれば、 金融引締めは 続く可能性があります。

したがって、

Inflation Peak ≠ Fed Pivot

です。

しかし市場にとっては、 Inflation Peakが見え始めること自体が、 将来のTightening Peakを考える 最初の材料 になります。

Inflation Acceleration

Inflation Peak

Disinflation Expectation

Tightening Peak Expectation

Future Fed Pivot Expectation

市場が先に反応する理由

株式市場は、 現在の政策だけを 見ているわけではありません。

重要なのは、 将来の政策経路 です。

現在の政策金利が 高くても、 市場が 「これ以上は 大きく上がらない」 と考え始めれば、 将来金利の期待は 変化します。

長期金利の上昇圧力が 弱まる。

Discount Rateの 上昇圧力が弱まる。

Valuation Compressionの 速度が弱まる。

すると、 それまで強く売られていた Long Duration Assetにも、 反発余地が 生まれます。

つまり、 株式市場にとって重要なのは、 金融政策が緩和的かどうかだけではない。

金融政策が 「さらに厳しくなる方向」なのか、 それとも 「厳しいままでも、 これ以上悪化しなくなる方向」なのか。

その変化が重要です。

株価にとって、 「良い政策」だけが Positiveなのではない。

「悪化し続けていた政策が、 これ以上悪化しなくなる」 それだけでも、 市場は反応する。

市場は「Level」より「Direction」を見る

これは、 レジーム分析で 非常に重要な考え方です。

政策金利が 高いか低いか。

Inflationが 高いか低いか。

景気が 良いか悪いか。

そのLevelだけでは、 相場の方向を 十分に説明できません。

市場が反応するのは、 しばしば Change of Direction です。

Inflationが高い。

しかし、 低下し始めた。

政策金利が高い。

しかし、 利上げ幅が縮小する可能性が出てきた。

景気が強い。

しかし、 減速し始めた。

こうした 変化率の変化 が、 次の相場を 先に動かします。

Levelを見る Regime Directionを見る
Inflationが高い Inflationが加速中か減速中か
金利が高い 利上げが加速中か減速中か
景気が強い 景気が加速中か減速中か
Liquidityが少ない Liquidityが減少中か安定化へ向かうか
Valuationが低い De-ratingが続くか止まり始めるか

2022年は、Leadershipが何度も入れ替わった

このため、 2022年の株式市場では、 Leadershipが 固定されませんでした。

Inflationが 最大のテーマになる局面では、 Energy。

Commodity。

Trading Companies。

Financial。

などが 相対的に評価されやすくなります。

一方、 Inflation Peak期待が 強くなる局面では、 長期金利の上昇圧力が弱まり、 GrowthやTechnologyが 反発することがあります。

そして、 景気後退懸念が 強くなると、 今度はCyclical企業の Earnings Riskが意識されます。

つまり、 同じ2022年でも、 市場が見ているRiskによって、 WinnerとLoserが 何度も入れ替わった のです。

Inflation Fear

Energy / Commodity / Value

━━━━━━━━━━

Inflation Peak Expectation

Yield Relief

Growth Rebound

━━━━━━━━━━

Recession Fear

Cyclical Earnings Risk

「Growthが終わった」のではない

2022年のGrowth株下落を見ると、 「Growth株の時代が終わった」 と考えたくなります。

しかし、 レジーム分析では そう単純には考えません。

Growth企業の 技術や事業モデルそのものが 突然消えたわけではありません。

変わったのは、 市場がその成長へ適用する Discount Rate です。

低金利では、 遠い未来の利益を 高く評価できます。

金利が上がれば、 その現在価値は 低下します。

つまり、 2022年に起きたことの一部は、 Growthの消滅ではなく、 Growthに支払うPriceの再設定 でした。

Growth Storyが 消えたのではない。

そのStoryに支払える Valuationが変わった。

日本株では「円安=全面的な追い風」でもなかった

日本株でも、 同じように 単純化できない構造がありました。

円安。

一般的には、 日本株にとって Positiveと考えられやすい要因です。

確かに、 海外売上比率の高い企業には、 円換算利益の増加という 追い風があります。

しかし、 円安が進むほど、 輸入価格も 上昇します。

Energy。

Food。

Raw Materials。

部品。

企業によっては、 円安によるCost増加が 利益を 圧迫します。

したがって、 重要なのは、 円安そのものではありません。

その企業が 円安のどちら側にいるのか です。

企業を見る基準が変わった

Inflationと 円安が同時に進む世界では、 企業を見る基準も 変化します。

海外売上比率。

輸入Cost比率。

Pricing Power。

Commodity Exposure。

Interest Rate Sensitivity。

Current Cash Flow。

Balance Sheet。

こうした要素が、 従来以上に 重要になります。

同じ日本企業でも、 Macro ShockへのExposureによって、 業績への影響が 大きく異なるからです。

追い風になりやすい構造 逆風になりやすい構造
海外売上比率が高い 輸入依存度が高い
Pricing Powerが強い 価格転嫁力が弱い
Commodity Exposureを持つ Commodityを大量消費する
Current Cash Flowが強い 遠い将来利益への依存が大きい
低Valuation High Valuation
金利上昇が収益改善につながる 金利上昇で資金調達負担が増える

名目成長と実質成長を分けて考える

Inflation Regimeでは、 もう一つ注意すべきことがあります。

Nominal Growthと Real Growthです。

物価が上がれば、 企業の売上高は Nominalには増えやすくなります。

10%値上げすれば、 販売数量が同じでも、 売上高は 増加します。

しかし、 原材料費。

Energy Cost。

人件費。

物流費。

も同時に増えれば、 利益まで 同じように増えるとは限りません。

したがって、 Inflation環境では、 売上成長率だけを見ると 企業の実力を 誤認する可能性があります。

重要なのは、 Nominal Revenue Growthが Real Earnings Growthへ 変換されているか です。

Inflation

Nominal Revenue Growth

━━━━━━━━━━

Input Cost Rise

Wage Rise

Energy Cost Rise

━━━━━━━━━━

Pricing Power

Margin Preservation

Real Earnings Growth

そして市場は「Soft Landing」を探し始めた

Inflation Peakが 意識され始めると、 市場には 新しい期待が生まれます。

Soft Landing です。

Inflationは 低下する。

FRBは 利上げを止める。

しかし、 景気は 深刻なRecessionにはならない。

企業利益も 大きく崩れない。

もしこれが実現すれば、 株式市場にとっては 理想的な組み合わせです。

Disinflation

Fed Tightening Slows

Yield Pressure Eases

Valuation Stabilizes

Earnings Remain Resilient

Soft Landing

しかし、 ここには 大きな矛盾があります。

Inflationを 十分に下げるためには、 需要を 弱くする必要があります。

需要を弱くすれば、 企業利益にも 影響します。

つまり、 Inflationが下がることと、 景気が悪くならないことを 同時に実現できるのか が、 次の市場テーマになります。

Bad News is Good Newsへ

ここで、 市場の反応は 再び変化します。

Part2では、 Strong Employment。

Strong Wage。

Strong Consumption。

こうしたGood Newsが、 追加利上げ期待を通じて 株式市場には Bad Newsになる構造を見ました。

しかし、 Inflation Peakが 意識されるようになると、 弱い経済指標が 金融引締め終了への期待を 高めることがあります。

雇用が弱い。

製造業が弱い。

住宅が弱い。

需要が弱い。

通常なら、 株式には Negativeです。

しかし、 それによって 「FRBが これ以上引き締めなくてよい」 と市場が考えれば、 金利が低下し、 株価が上昇することがあります。

つまり、 Bad News is Good News です。

Inflation Acceleration Inflation Peak Expectation
強い景気 → 利上げ強化 弱い景気 → 利上げ減速期待
Good News is Bad News Bad News is Good News
Inflationが最大Risk Tightening Peakが焦点
Yield Rise Yield Stabilization期待
Valuation Compression Valuation Stabilization期待

しかし、Bad Newsが悪すぎれば本当にBad Newsになる

もちろん、 景気悪化なら 何でも株価にPositive、 というわけではありません。

景気の弱さが 軽度であれば、 Fed Pivot期待が 株価を支えます。

しかし、 景気が 急激に悪化すれば、 企業利益そのものが 崩れます。

すると、 金利低下による Valuation Supportより、 Earnings Downsideの方が 大きくなります。

つまり、 Bad Newsには 二つの領域 があります。

Moderate Slowdown

Lower Inflation

Fed Pivot Expectation

Positive for Valuation

━━━━━━━━━━

Severe Slowdown

Earnings Collapse

Credit Risk

Negative for Equities

市場が望んだのは、 景気後退ではない。

インフレだけが下がり、 景気は壊れないことだった。

2022年末、もう一つの変化が日本で起きた

そして、 2022年末。

日本市場では、 もう一つ重要な変化が 起こります。

それまで、 世界の中央銀行が 金融引締めへ向かう中でも、 日本銀行は 強力な金融緩和を 維持してきました。

この政策差が、 日米金利差。

円安。

Imported Inflation。

という経路を通じて、 日本経済へ 大きな影響を与えていました。

しかし、 市場では次第に、 日本の金融政策も 永遠には同じではないのではないか という見方が 強まります。

2022年12月、 日本銀行は 長期金利の変動許容幅を 拡大します。

日銀は、 これを 金融緩和の枠組みを維持しながら 市場機能を改善する措置として 位置づけました。

しかし市場は、 それだけでは 受け取りませんでした。

長く続いた 超金融緩和にも、 いつか変化が来るのではないか。

その可能性を 意識し始めます。

世界の金融政策が 変わったあと、 市場の視線は、

「日本も変わるのか」

へ向かい始めた。

ただし、これはまだ日本の金融引締めではない

ここは、 相場史分類として 慎重に扱う必要があります。

2022年12月の変化をもって、 「日銀が金融引締めへ転換した」 と定義するのは 早すぎます。

政策金利は 依然として低い。

金融緩和も 継続している。

したがって、 この時点で起きたことは、 BOJ Tightening Regimeへの 完全な転換 ではありません。

むしろ、 市場が 「日本の超金融緩和にも 変化の可能性がある」 と認識し始めたことが 重要です。

これは、 後の日本株レジームを考えるうえで、 非常に重要な Transition Signalになります。

MHDB Interpretation

2022年12月のYCC修正

BOJ Tightening Regime Start

しかし、

Ultra-Easy Policy Permanence

Policy Normalization Possibility

= Transition Signal

ここで、このフェーズの内部構造が完成する

インフレ・金融引締相場を 一つの流れとして整理すると、 このようになります。

COVID Policy Response

Liquidity / Fiscal Expansion

Economic Reopening

Demand > Supply

Inflation

Fed Pivot

Rate Hikes / QT

Yield Rise

Valuation Compression

━━━━━━━━━━

Ukraine War

Commodity / Energy Shock

Inflation Persistence

━━━━━━━━━━

Fed Tightening

BOJ Easing

Yen Depreciation

Imported Inflation / Export Earnings

━━━━━━━━━━

Inflation Peak Expectation

Tightening Peak Expectation

Next Regime Search

Part4の結論

2022年後半、 市場は Inflationそのものだけを 見る相場から、 その先を考える相場へ 移っていきました。

Inflationは いつPeakを迎えるのか。

FRBは いつ利上げ幅を縮小するのか。

Tighteningは いつPeakを迎えるのか。

景気は Soft Landingできるのか。

それとも、 Recessionへ向かうのか。

市場の焦点は、 現在のInflation Levelから、 次のPolicy Directionへ 移り始めます。

同時に日本では、 円安による 企業利益の押し上げと、 Imported Inflationによる 家計・企業Costの上昇が 共存していました。

そして、 2022年末には、 長く変わらないと考えられていた 日本銀行の政策にも、 わずかな変化の兆候が 現れます。

しかし、 まだ次のレジームは 完成していません。

Inflationは 残っている。

FRBは 引締めを続けている。

景気後退Riskも 残っている。

市場は、 古いレジームから 完全には抜け出していない。

それでも、 次の相場を作る条件は、 少しずつ揃い始めていました。

レジーム転換は、 ある日突然 完成するものではない。

古いDriverが弱まり、 新しいDriverが生まれ、 市場の視線が変わる。

次の相場は、 前の相場が終わる前から 始まっている。

そして、 2022年11月30日。

Inflation。

金利。

Recession。

これらが 市場の中心にある中で、 一見すると この相場とは無関係に見える、 小さな変化が起きます。

ChatGPTの公開。

その時点では、 まだ市場全体を動かす Dominant Driverではありません。

しかし後から見れば、 そこには AI。

GPU。

Semiconductor。

Data Center。

設備投資。

という、 次のStructural Growth Cycleへ つながる種がありました。

次のPartでは、 古いレジームがまだ続いている最中に、 なぜ次のレジームの種が生まれるのか。

ChatGPT公開を 単なるTechnology Eventではなく、 Regime Seed として位置づけ、 2023年1月4日という 本フェーズの終点へ向かう構造を 整理します。

Part 5 / Final

古いレジームの中で、次の相場の種が生まれていた

2022年末。

市場の中心にあったのは、 依然として Inflation。

Fed Tightening。

Yield。

Recession Risk。

そして日本では、 Yen Depreciationと BOJ Policyでした。

つまり、 市場を支配していた Dominant Driverは、 まだ インフレ・金融引締め でした。

しかし、 相場史を後から振り返ると、 その内部ではすでに、 次の相場を作る 新しいDriverが いくつも生まれ始めていました。

次のレジームは、 前のレジームが 完全に終わってから 生まれるわけではない。

古い構造の中で生まれた小さな変化が、 やがて次の市場の中心になる。

2022年11月30日、ChatGPTが公開された

2022年11月30日。

OpenAIが ChatGPTを公開しました。

その時点で、 ChatGPTが 世界の株式市場を動かす 中心テーマだったわけではありません。

市場は依然として、 CPI。

FOMC。

政策金利。

長期金利。

景気後退。

これらを 見ていました。

しかし、 後から振り返れば、 ChatGPTの登場は 生成AIという 新しいTechnology Cycleが 一般社会へ 急速に認識され始める 重要な契機となりました。

Generative AI。

Large Language Model。

GPU。

Advanced Semiconductor。

Data Center。

Electricity Demand。

AI Infrastructure Investment。

その後の市場で 巨大なInvestment Themeとなる 構造の種が、 この時期に 現れ始めます。

しかし、ChatGPT公開をフェーズ転換点にはしない

ここは、 Market History DBの 分類思想として重要です。

大きなEventが 発生した日と、 Market Phaseが 転換した日は、 必ずしも一致しません。

ChatGPT公開は、 後の市場から見れば 非常に重要なEventです。

しかし、 2022年11月30日の時点で、 日本株の価格形成を 支配するDriverが Inflation / Tighteningから AIへ変わったわけではありません。

したがって、 この日を インフレ・金融引締相場の 終了日とはしません。

MHDBでは、 このようなEventを Regime Seed として捉えます。

MHDB Interpretation

ChatGPT Release

Immediate Phase Change

しかし、

Generative AI

Compute Demand

Semiconductor / GPU

Data Center Investment

New Structural Growth Driver

= Regime Seed

もう一つのSeedは、日本自身の中にあった

しかし、 次の日本株レジームを考えるうえで、 AI以上に重要なのが 日本市場自身の構造変化 です。

長い間、 日本経済と日本株には Deflation。

Ultra-Low Interest Rate。

低いNominal Growth。

低いROE。

過剰なCash。

持ち合い株式。

低PBR。

資本効率への弱いPressure。

という特徴が 存在していました。

しかし、 2022年を通じて、 この前提そのものに 変化の兆候が現れます。

Inflationが戻る。

円安が進む。

Nominal Earningsが変化する。

金利のある世界が 海外で戻る。

そして、 日本でも 超金融緩和が 永遠に続くという前提が 少しずつ 揺らぎ始めます。

次の日本株相場を作ったのは、 AIだけではない。

「日本は永遠にデフレである」 という前提そのものが、 揺らぎ始めた。

2022年12月の日銀政策修正は、重要なTransition Signalだった

Part4で見たように、 2022年12月、 日本銀行は YCCの運用を 修正しました。

これを、 直ちに 「金融引締め開始」 と定義することはできません。

金融緩和そのものは 継続していました。

しかし、 市場にとって重要だったのは、 政策のLevelだけではありません。

Directionです。

それまで市場では、 日本銀行の 超金融緩和が 長期間続くことが 強い前提となっていました。

しかし、 その政策に 修正が加わったことで、 市場は初めて本格的に、

「日本の金融政策にも 正常化という未来があるのではないか」

と考え始めます。

ここから「金融正常化移行期」への扉が開く

次のMarket Cycle / Regimeを、 Market History DBでは 金融正常化移行期 と定義します。

重要なのは、 2023年から 突然すべてが正常化した、 という意味ではありません。

むしろ逆です。

超低金利。

Deflation。

低Nominal Growth。

企業のCash蓄積。

低いCapital Efficiency。

こうした 長期構造を前提としてきた日本市場が、 少しずつ 正常化を織り込む市場へ 移行し始めた という意味です。

Deflation Regime

Ultra-Easy Monetary Policy

Low Nominal Growth

Low Capital Efficiency

━━━━━━━━━━

Inflation Returns

Wage / Price Change

BOJ Normalization Expectation

Corporate Governance Reform

Financial Normalization Transition

そして最初に株式市場が評価したのは「資本効率」だった

ここが、 次のフェーズへの 重要な接続点です。

金融正常化移行期の 最初のフェーズを、 Market History DBでは 資本効率改革相場 と定義します。

期間は、 2023年1月5日 – 2024年7月11日。

なぜ、 「AI相場」でも、 「円安相場」でも、 「インフレ相場」でもないのか。

それは、 この時期の日本株再評価を より深い構造から見ると、 企業が持つ資本を どのように使い、 どれだけのReturnを生み、 株主価値へつなげるのか という問題が、 市場評価の中心へ 入っていくからです。

PBR。

ROE。

Cost of Capital。

Share Buyback。

Dividend。

Cross-shareholding。

Business Portfolio。

Corporate Governance。

こうした言葉が、 単なる企業財務の議論ではなく、 日本株全体のRe-rating Driver になっていきます。

これは「安い日本株」を買う相場とは違う

日本株は長い間、 海外市場と比較して Valuationが低い。

PBRが低い。

Cashを多く持つ。

という特徴を 指摘されてきました。

しかし、 安いというだけでは、 株価が上がる理由には なりません。

安い状態が 10年続くこともあります。

重要なのは、 なぜそのDiscountが 縮小するのか です。

企業自身が 資本効率を意識する。

市場との対話を 強める。

余剰Cashを 株主へ返す。

低収益事業を 見直す。

持ち合い株式を 縮小する。

ROEを 改善する。

こうした変化によって、 「安いまま放置される市場」から、 Discount解消を期待できる市場 へ変わる。

ここに、 次フェーズの核心があります。

割安だから、 株価が上がるのではない。

割安であり続けた理由が 変わり始めたとき、 Re-ratingが始まる。

AIは、そこへ重なってくる

では、 ChatGPTとAIは どこに位置づけるべきでしょうか。

AIは、 次のフェーズを 単独で定義するDriverではありません。

しかし、 非常に重要な Growth Driverとして 後から重なってきます。

AI需要。

GPU。

Advanced Semiconductor。

Semiconductor Manufacturing Equipment。

Electronic Components。

Data Center。

日本には、 AIそのものだけでなく、 そのInfrastructureを支える 製造装置、 材料、 部品、 電力関連などの 企業群があります。

つまり、 次の相場では、 Japan Re-rating Global AI Investment Cycle が、 徐々に同じ市場の中で 重なっていきます。

Japan Structural Reform

Capital Efficiency

Japan Re-rating

━━━━━━━━━━

Generative AI

Compute Demand

Semiconductor Investment

━━━━━━━━━━

Domestic Structural Change

Global Technology Cycle

New Japan Equity Leadership

なぜ2023年1月5日から別フェーズなのか

では、 なぜ インフレ・金融引締相場を 2023年1月4日で終え、 2023年1月5日から 資本効率改革相場へ 切り替えるのでしょうか。

重要なのは、 この日を境に Inflationが 消えたわけではないことです。

FRBの利上げも 終わっていません。

QTも 続いています。

つまり、 旧Driverは残っています。

それでも フェーズを切り替える理由は、 日本株を説明する Dominant Narrativeと Driver Balanceが、 ここから次第に 変わっていくからです。

世界的なInflationと Fed Tighteningだけでは、 日本株の動きを 十分に説明できなくなる。

代わって、 Japan Reopening。

Nominal Economy。

Wage / Price Dynamics。

BOJ Normalization Expectation。

Corporate Governance。

Capital Efficiency。

Foreign Investor Re-evaluation。

そして後には、 AI / Semiconductor。

こうしたDriverが、 日本株の価格形成に より大きな意味を 持ち始めます。

MHDB Phase Boundary Principle

Phase Change

Old Driver Disappears

Phase Change

=

Dominant Driver Balance Changes

旧Driverが残っていても、 市場を説明する中心構造が変われば、 新しいPhaseへ移行する。

二つのレベルで転換が起きる

そして今回の境界は、 単なるPhase Changeより 意味が大きい。

2023年1月5日は、 Market Phase だけでなく、 より上位の Market Regime も切り替わる境界です。

2023年1月4日まで 2023年1月5日から
インフレ・金融引締相場 資本効率改革相場
Inflationが中心問題 日本株Re-ratingが中心テーマへ
Fed Tightening BOJ Normalization Expectation
Global Discount Rate Shock Japan-specific Valuation Reassessment
Growth Valuation Compression Capital Efficiency Re-rating
円安による利益・物価への影響 Nominal Growthの再評価
Global Macro主導 Japan Structural Changeの比重上昇

そして、 その上位構造として、

金融正常化移行期

が始まります。

インフレ・金融引締相場とは何だったのか

ここまでを振り返ると、 インフレ・金融引締相場は、 単なる 「株価が上がらなかった時期」 ではありません。

コロナ危機を救うために 供給されたLiquidityが、 経済再開とともに 需要を支えました。

しかし、 Supplyは 同じ速度では戻らなかった。

Demand > Supply。

そこから、 Inflationが生まれます。

そして、 Ukraine Warが Energy / Food / Commodity Shockを 重ねました。

Inflationは 中央銀行のReaction Functionを変え、 FRBは QEからTaperingへ。

Taperingから Rate Hikesへ。

そしてQTへ。

Liquidity Regimeが 反転しました。

その結果、 Yieldが上がり、 Discount Rateが上がり、 Growth Valuationが 圧縮されました。

一方、日本では、 BOJが金融緩和を 続けました。

FedとBOJの Policy Divergenceが 円安を生み、 輸出企業利益と Imported Inflationという 二つの効果を 日本経済へもたらしました。

そして2022年末。

Inflation Peak期待。

Tightening Peak期待。

BOJ Policyの変化。

Generative AIの登場。

日本企業改革への期待。

旧レジームを弱める要素と、 次のレジームを作る要素が、 同時に現れ始めます。

このフェーズが残したもの

インフレ・金融引締相場が 市場に残したものは、 非常に大きなものでした。

第一に、 金利はゼロであり続ける という前提が 崩れました。

第二に、 Liquidityは常に増え続ける という前提が 崩れました。

第三に、 高いGrowthには どんなValuationでも支払える という前提が 崩れました。

第四に、 日本でも、 Deflationと超金融緩和が 永続する という前提が 揺らぎ始めました。

そして第五に、 企業を見る基準が、 売上成長だけではなく、 Cash Flow。

Pricing Power。

ROE。

Cost of Capital。

Capital Allocation。

へ広がっていきました。

これは、 次の 資本効率改革相場 を理解するための 重要な土台になります。

この相場を一文で定義するなら

コロナ危機を救ったLiquidityが 経済再開とSupply Constraintを通じてInflationを生み、 そのInflationを止めるための金融引締めが 金利・Valuation・為替・市場Leadershipを 再構築した相場。

これが、 2021年2月17日から 2023年1月4日までの インフレ・金融引締相場 です。

そして、日本株は次の時代へ

2023年。

日本株は、 新しいMarket Regimeへ 入っていきます。

金融正常化移行期。

ただし、 最初に市場が買ったのは、 金利正常化そのものでは ありませんでした。

長いDeflationの中で 積み上がった、 日本企業の 低い資本効率。

過剰Cash。

低PBR。

持ち合い株式。

低いROE。

これらが、 今度は逆に 改革余地 として 評価され始めます。

日本企業は、 持っている資本を 何に使うのか。

利益を どれだけ生み出すのか。

株主へ どう還元するのか。

企業価値を どう高めるのか。

市場が日本企業へ向ける問いが、 変わり始めます。

デフレ時代に 弱点だったものが、

正常化の時代には、 改革余地として 再評価され始める。

次のフェーズは、 資本効率改革相場

2023年1月5日 – 2024年7月11日。

日経平均は、 やがて 1989年の史上最高値を 更新します。

しかし、 重要なのは、 「株価が最高値を更新した」 というEventではありません。

なぜ、 30年以上 超えられなかった価格を この時期に 超えることができたのか。

そこには、 企業統治改革。

資本効率。

PBR。

ROE。

賃金。

Inflation。

BOJ Normalization。

海外投資家。

円安。

そしてAI・半導体。

複数の構造変化が 重なっていました。

次の記事では、 日本株が 「安い市場」から 「変わり始めた市場」 として評価されていく過程を、 レジームとして 読み解いていきます。

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